昔々のお話

伝説「浄蓮の滝の怪異」思いを馳せて天城越えを体験してください

「そんな昔の話のどこがおもしろいの?」と言われそうですが、実際に浄蓮の滝に行ったことがありますが、伝説が言い伝えられている理由がわかる場所でした。
「浄蓮の瀧の怪異」に思いを馳せてその場所を楽しみました。

明治時代に滝に降りる道ができたということで、それまでは人々は気軽に近づけない滝であったようです。

今は石川さゆりさんの「天城越え」歌碑が滝壺の近くにあり、小さなお店もあります。

伝説「浄蓮の滝の怪異」思いを馳せて天城越えを体験してください

著者 後藤江村の「浄蓮の瀧の怪異」をご紹介します。著者の言葉に「郷土を愛することに私は誰にも負けない自信を持っている」とあります。
昭和5年頃に書かれているようなのですが、昭和5年頃に「昔の人は・・・」と書かれていて、温かい気持ちになりました。

郷土を愛しているから、この思いを後世に残していこうと思ったのでしょう。

浄蓮の瀧の怪異

浄蓮の滝は伊豆第一の名瀑(めいばく)である。高さ二十五米の絶壁を落下する狩野川の水は、大池のような瀧壺(たきつぼ)に紫黒色(しこくいろ)の渦をまいて、見るからに一種凄惨(せいさん)な気を漂わせている。

むかし、この瀧の近くに青木某という農夫があった。彼の家も田も畑も瀧の側にあった。

静かに日が暮れてあたりの物音が消されると、遠くで鳴る雷のような瀧の響きが聞こえ、畑で土を耕すときは、すぐ足の下で気味悪く漂える地底の呻き(うめき)が感ぜられた。

ある日、彼は一人で瀧の近くの畑を耕していた。

日がやや斜めになった頃、彼は鍬を杖にして背を伸ばした。そしてゆったりと腰をおろして煙草入れを出した。その時、どこからか一匹のたくましい女郎蜘蛛が彼の足の上に這い上がってきた。が、すぐ一條(ひとすじ)の太い糸をひいて去った。

彼が幾度か吸い殻を泥まみれの掌(てのひら)でたたいたとき、ふと気がつくと無数の糸が足をまいていた。

蜘蛛は糸をひいては去り、またかえってきた。彼は蜘蛛の巣糸の営みをながめた。そしてその糸をふみにぢる気にはなれなかったので、そのまま手近の桑の古株にまきつけてやった。

彼が煙草入れを腰にさして、再び立ち上がった時、嵐のような瀧の響きがした。それはたしかに聞き慣れた水の音ではなかった。風もないのに梢が揺れた。

「はて、尋常事ではない」

彼がそう呟いて空を仰いだ時、再び大地が怪しく揺れたと思うと蜘蛛の糸を巻き付けた桑の古株がめりめりと抜けた。

「や、やつ」彼は思わず鍬の柄を固く握った。蜘蛛だ、蜘蛛だ。女郎蜘蛛の仕業である。

桑の古株はするすると恐ろしい目には見えない力に引かれて行った。彼は震える足を踏みしめて桑の株を追った。

青黒く渦巻く瀧壺がすぐ目の下にあった。白い泡、魔物のように荒れ狂う淵は桑の古株を呑み込んでしまった。

彼ははじめて我にかえった。糸のような冷たい感じが背筋をはった。

「恐ろしいことだった。あの時俺が糸をはずしておかなければ、あの桑の株が俺の身代わりだった」そう思った。

その後、浄蓮の瀧の主は女郎蜘蛛だという噂が高くなった。危うく瀧に呑み込まれそうになった彼は再びあの畑へ寄りつかなくなった。

それから幾年のことである。他国から渡ってきた一人の樵夫が瀧の古木を斬っていた。瀧の怪異を知らない樵夫は平気で仕事をした。

ある日樵夫は誤って鉈を瀧壺に落とした。たかが一本の鉈ではあったが樵夫には、あきらめきれない。

彼は着物を脱いで滝壺に潜り込んだ。

「もし、もし」優しい女の姿が水中に聞こえた。思わず顔をあげると妖艶な若い女が岩陰から半身を現して、片手に樵夫の落とした鉈を握っていた。

「あなたの落とした鉈は返してあげますが、私のことを口外するとあなたの生命はありませんよ。私はこの瀧の主の女郎蜘蛛・・・」

樵夫は女の手から鉈を受け取った。そしてそのまま夢心地で水の上に浮かび出した。

小半時経ってから樵夫は瀧の岸の岩に抱きついている自身の姿を見出した。手にしっかりと鉈を持っていた。

樵夫は瀧の怪異をまざまざと見たのであった。それから里人にそれとなく瀧の怪異をたずねると、古老の口から青木某が見たという不思議な女郎蜘蛛の話を聞いた。

「ふむ、それはたしかだ」

樵夫はそう言って深く感に打たれた。けれども自分の見た怪異については一言も語らなかった。

ある冬の夜、樵夫は里の茶店で酒を呑んでいたが、居合わせた人々が瀧の怪異について話し合っているのを小耳にはさんで、思わず膝をのりだした。そして、とうとう自分自身がまざまざと見た女郎蜘蛛の精について口をすべらせた。

「口外すると生命はないと言われたが、これがどうして黙っていられよう」

樵夫はそう言った。そうしてしたたかに酒をあをった。

その時樵夫は、忽然とあの世へ旅立ってしまったので、里人は今さらながら瀧の主、女郎蜘蛛の精に恐れを感じて、決して瀧に近づかなかったという。

昭和6年刊行 伊豆傳説集 著作者・後藤江村 発行所郷土研究社より

浄蓮の滝の女郎ぐものはなし

むかしむかしのこと、浄蓮の滝の近くはひっそりとした森がつづく薄暗いところでした。

ある日、ひとりの木こりが斧をふるっていたので、音が浄蓮の滝に響き渡っていました。

やれやれと木こりはいっぷくしようと腰を下ろすと、足下にいた一匹の女郎ぐもがするすると糸をたぐり出し、木こりの足に糸を何度もまきつけてしまいました。

木こりは仕事のため立ち上がろうとしたときに、手でくもの糸をすくうようにして側らの木の切り株にかけてやりました。

そのとき、瀧壺におそろしい響きが嵐のようにどよめいたかと思うと、地面がはげしく揺れ動き、木こりが糸をまきつけた切り株はめりめりと音を立てて滝の中に落ち込んでいきました。

木こりはあまりのおそろしさにふるえ、もし、くもの糸を自分の足からはずさなかったら、自分の体が切り株のようにあやしいくもの糸に引かれて、瀧壺にのみこまれていたであろうと思うと、もうここには来ることはできなくなりました。

このことがあってから、浄蓮の滝の主は女郎ぐもであるといううわさが広がるようになりました。

しばらくの年月が過ぎて、遠い他国から木こりがやって来ました。

うわさを知らなかったのか浄蓮の滝の見事な古木に目をつけ、斧をふるっていました。

千年の木は次々と伐り倒されていき、斧をふるう音は響き渡っていました。

そのときに木こりの斧はあっという間に滑り落ち、滝壺の中に落ち込んでしまいました。

木こりにとっては長年使いなれた仕事の道連れです。このまま失うことはできないので、木こりは滝のほとりに下りていき、着物を脱いで瀧壺のしぶきの中に飛び込みました。

そのとき瀧壺の大きな岩かげからゆらめくように美しい女が姿をみせました。

透き通る水の中に黒髪をなびかせ、裸身の片手には木こりの斧を持っていて、「そなたが探している斧を返しましょう。そのかわり、このことを人には話してはいけない。もらさば、そなたの命はもらいましょう。わらわは浄蓮の主の女郎ぐも・・・」

とつぶやくように言ったかと思うと、その姿は見えなくなってしまいました。

しびれるような深山の滝の冷たさにあえぎながら岸にはい上がった木こりは、手にしっかりと斧を握りしめていました。

やがて土地のものから、浄蓮の滝の主のあやしい女郎ぐもの話を知った木こりは、心の中ではうなずきながら、自分の見たことは誰にも話しませんでした。

冬がやって来て、ある夜、ふもとの知り合いの家でふるまい酒に酔った木こりは、ふと口がすべって瀧壺の中で斧を返してくれた美しい女のことを話してしまいました。

ぱちぱちと燃える火のそばで木こりがふと気づき、このことを話すと命をもらうと言われたが・・・ごろりと横になり、やがて大きないびきのひとつ、ふたつとひっそりと静まったかと思ったとき、そのまま息が絶えてしまっていました。

(参考・伊豆の民話 岸なみ・編)

浄蓮の滝の女郎蜘蛛の話を二つご紹介しました。話の内容は同じですが、昭和32年頃に書かれた岸なみ(編)「伊豆の民話」にもふるさとを思う気持ちが溢れていました。

Googleマップ 浄蓮の滝

Googleマップクチコミより 天城越え途中にある静岡県を代表する名爆!
滝道までの階段は中々キツいですが、その先のマイナスイオンは最高!

滝が見事なのはもちろんですが、浄蓮の滝までの階段の道のりが木々が生い茂っていて自然のパワーあふれる場所でした。

往復は階段になるので、気を付けてください。
滝周辺は、マイナスイオンたっぷりで夏場なのにひんやりして涼しかった!
わさび田があったり、売店もありました。
釣り(有料)も出来るので、家族連れでも楽しめると思います。

確かに駐車場は広いですし、滝壺までは階段となります。足の不自由な方は下まで行くのは困難だと思います。

おわりに

いかがでしたでしょうか。今でも滝から少し離れた所に行くと、かなり大きな木が枝や葉を広げて生い茂る所で、蜘蛛の巣もたくさん見ることができる場所です。

このような伝説が生まれたのもわかるような気がします。

若くて美しい滝の精にはご用心ですね。

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