平安時代の初期の頃の話ですが、「道成寺の安珍清姫(あんちんきよひめ)」という芸能でも人気のある伝説があります。
この伝説は長唄、能、歌舞伎などにも取り上げられ、多くの人に知れ渡っているといわれる話です。
昔からの伝説は語り継がれたりしているので、話の内容は少し変わっていたりするようですが、若い僧、安珍と清姫という美しい娘の恋物語は変わりなく語られています。
この物語でも感じる女の恋い焦がれる思いは、今も昔も変わっていないのだと気づかされます。
それと男性の皆様、お気を付けくださいませ。女の執念も大昔から変わっていないのです。
女性は辛い思いをすると、一見平気なようで、そしてもう忘れたようであっても、心の奥の部屋にはそのときの思いをしまって置くのです。
恐ろしき女の執念!?道成寺の安珍清姫(あんちんきよひめ)の伝説

Wikipediaより
和歌山県日高郡川辺町の道成寺の本堂が安珍清姫の恋物語の舞台となっています。
若い僧、安珍に恋した美しい娘清姫は安珍にだまされたと知ると、大蛇になって日高川を泳ぎ安珍を探した・・・。
もの凄い形相の清姫に安珍はすっかりと驚いてしまいました。
女の怖い形相には今の時代も男性はおののくのではないでしょうか。悪いことをすると、火を噴きながら女の人が追いかけてくるかもしれません・・・。
「そういう経験はあるよ」という男性もいるのではないでしょうか・・・。
安珍清姫の伝説

和歌山県日高郡川辺町の道成寺の安珍清姫の伝説は、醍醐天皇の頃、平安時代初期の頃の話となります。
奥州白河に安珍という若い僧がいました。熊野権現を尊信し、毎年、山伏(山中で修行する修験者)の姿で熊野へ参ることを行っていました。
そのときには室の郡(牟要郡)真砂の庄司館を宿としていました。庄司の家には清姫という美しい娘がいました。毎年訪れる安珍とは、顔なじみになっていました。
安珍も美しい清姫を可愛がり、「おまえが大きくなったら妻にして、奥州に連れて行こう」と軽口をたたいていました。
若い清姫は次第に恋心を持つようになっていました。男は軽い冗談といった感じです。
ある日のことですが、いつもの通りに熊野参りのために庄司の家に泊まった日のこと、清姫が安珍の寝床にやってきました。
清姫も大人になっていたのです。
清姫はいつまでも私を待たせないで、早く奥州に連れて行ってくれと言い寄る。安珍は熊野参りを終えてからまた寄るから、奥州に連れていくと言いました。
清姫は安珍が来るのをひたすら待ちつづけましたが、安珍は清姫を妻にする気などなかったのです。
何日も経っても安珍は現れない。さては、だまされたか・・・。
たとえ、どこに逃げようとも、草の根かきわけても探してみせよう。男にだまされたと知った女の執念を安珍はわかっていなかった。
安珍が通りそうな所を探し回る清姫。そしてついに見つけ出した。
恐ろしい形相の清姫を怖がる安珍は逃げ回り、日高川まできました。
安珍に頼まれた渡し守は、清姫のことは舟に乗せてくれなかったのです。怒り狂う清姫の体はそのときに大蛇となって日高川を泳ぎきった。
逃げ惑う安珍は道成寺に駆け込み鐘楼の釣り鐘に身を隠した。大蛇になった清姫は釣り鐘に体を巻き付け、火を噴き、尾で鐘をたたき続けた。
三刻(6時間ぐらい)経って、大蛇は両目から血を流し、鐘から離れた。大蛇は八幡山の入り江に身を沈めました。
身を潜めて見ていた僧たちは、鐘を取り除き、中を見ると、黒焦げのまま死んでいる安珍の哀れな姿が見つかりました。
江戸末期に出された「道成寺縁起」のあらすじとなっています。(参考・民話と伝説6東海・南紀より)
いかがでしたでしょうか。道成寺には、蛇を思わせるの蛇榁の木と安珍を供養した安珍塚があるとのこと。
わが身を大蛇に変えて、裏切り者を追いかけ焼き尽くしてしまう・・・この伝説が語り継がれることに女の執念を感じます。
Googleマップより 安珍と清姫の物語を描いた絵巻と神聖な仏像がある古刹。 道成寺
<安珍清姫供養の千手観音像>

Wikipediaより
和歌山県日高郡川辺町には清姫を供養した蛇塚もあるとのことですが・・・?
まとめ
和歌山県日高郡川辺町の道成寺の安珍清姫伝説は話は少しずつ違っていたりしますが、昔から伝えられてきた伝説に女の執念が描かれていて、女の怖さをわかっていただけたと思います。
今でも伝えられているところに、昔から変わらない女心があるのではないかとヒヤリとしますよね。
大蛇と川と繋げるところは、そこに災害があって伝説によって後世に残そうとしたのか・・・と考えてしまいます。
濁流が大蛇が襲ってくるように見えたのではないかと想像します。
平安時代の話で江戸末期に出された「道成寺縁起」の中の話なのでわかりませんが、いろいろと想像をするとおもしろいですね。
和歌山県日高郡川辺町道成寺に行ったときには、若い僧と美しい娘の愛の確執に触れてみてはいかがでしょうか。
道成寺には安珍の使った扇、清姫の使っていたふくさが残されているそうです。
旅をする目的が蛇塚を探すことだったり、道成寺に行って、安珍が使ったと言われる扇を見ることだったり、清姫の使っていたふくさを見ることだったりすると楽しくなるような気がします。
旅の目的は人によって違ってきますね。
歴史や伝説を追って出かけるのも楽しいと思います。
清姫が大蛇となって、安珍が入っている鐘に巻き付き火を噴く、恐ろしい絵とともに残され、語り継がれる「安珍清姫」の伝説を紹介しました。

